故郷は遠きにありて?

2014年2月10日更新


東奥日報コラム「あおもり経済未知しるべ」(第28回)

●立春を過ぎ、暖かい日があったり、えんぶりのポスターが張られていたりするのを見ると、春の訪れが近いことを感じます。そして春は新しい門出や選択の季節でもあります。

●先月末の朝刊に、青森県からの転出人口が1年間で2万4千人を超え、転入してくる人を差し引いた転出超過も6千人を超えたとの記事が出ています。これから先、特に15歳から65歳までの生産年齢人口の減少ペースを緩やかにするための継続的な転入増加対策を講じていかないと、止められない少子高齢化と相まって、この地域の人口減少と活力の衰退に加速度を加えてしまいかねません。そう考えるとき、転入の第一候補群はUターン希望者になると思います。

●ただ、青森にUターンしようとする人にも不安要素が大きく3つあると思います。子供の教育のこと、友人知人や地域とのかかわりのこと、そして何より仕事と収入のことです。このうち、仕事や収入に関する不安に対しては、まだずいぶん対応の余地があると思います。たとえば、首都圏にしばらく住んでいると、青森県内企業の求人情報に触れる機会が圧倒的に少ないことを感じます。現実には、Uターン人材を求める県内企業は多いですし、大学生の新卒採用情報は県内にもたくさんあるのに、探すことすらあきらめて首都圏に就職してしまう人が数多くいます。また、企業が求めるUターン人材の筆頭は30歳代の中堅社員なのですが、その年齢で首都圏から県内企業にUターンすると、実は収入が3割ぐらい減ることになると思います。それでもなお、東京よりはずっと「豊かに」暮らせるというのが、多くのUターン経験者の実感ではないでしょうか。新しい何かを選択するということは、他の可能性やチャンスや、いま手にしているものを自ら放棄することにつながるので、情報が少ないと判断に迷うのが当たり前です。せっかく前に踏み出そうとしている方が「知らないから、しょうがないから故郷は遠きにありてでいい」という決断をしなくて済むように、少なくとも手触り感のある生きた情報の提供を、私達も続けていこうと思っています。